累乗と累乗根 指数と対数

 
累乗と累乗根
自然数  正の実数   負の実数
グラフ
累乗  累乗根
 
対数 計算尺 対数のグラフ
指数関数的増加 片対数グラフ 指数関数的減少



累乗と累乗根 自然数

一辺が10cmの正方形の面積は、10*10=100cm2です。
この演算は、10*10=101+1=102と表現され、10の2乗です。
面積が100cm2の正方形を作るために、一辺の長さを、いくらにしたらいいでしょうか?
その長さをxcmとすると、x*x=x2=100を満足する、xを求める演算になります。
そのxは、100の平方根や2乗根と、呼ばれています。

一辺が10cmの立方体の体積は、10*10*10=1000cm3です。
この演算は、10*10*10=101+1+1=103と表現され、10の3乗です。
体積が1000cm3の立方体を作るために、一辺の長さを、いくらにしたらいいでしょうか?
その長さをxcmとすると、x*x*x=x3=1000を満足する、xを求める演算になります。
そのxは、1000の立方根や1000の3乗根と、呼ばれています。

一般的に、値aを、n回連続する乗算は、a*・・・*a=a1+・・・+1=anと、表現されます。
この演算を、aのn乗、aを底(基数)、nを指数(冪指数)と、呼びます。
ここでは、基数と指数の呼び方を、用います。
aのn乗を求める方法は、aのn回の乗算です。



値aに対して、a=xnを満足するxは、aのn乗根と、呼ばれています。

aのn乗根を求めるために、コンピューターのプログラミングを用いる方法を、検討します。
ここでは、適当なxに対して、a=xnを満足するxを、繰り返し検索する、次の方法を用います。

(1)適当なxは、ある範囲内x1とx2にあると仮定し、x=(x1+x2)/2とします。
(2)初回は、x1=1、x2=aとし、xnを計算します。
(3)初回以降は、xnを計算し、その計算値とaを比較し、次回のxを、求めます。
    計算値がaより大きい場合は、x2=xとして、x=(x1+x2)/2とします。
    計算値がaより小さい場合は、x1=xとして、x=(x1+x2)/2とします。
(4)計算値とaの差の絶対値が、収束値より小さくなるまで、(3)を繰り返します。

収束値





累乗と累乗根 正の実数

上述では、a=xnの計算において、指数nは、0,1,2,・・・の自然数に、限定しました。
指数が、2.5の様に、実数の場合、累乗の計算をどう取り扱うのかを、検討します。

102.5 = 102+0.5 = 102*100.5
x0 = 102  x1 = 100.5 とすると
102.5 = x0*x1 です。
さらに、x1 = 100.5より、x110 = 105 です。
x110 = 105 を満足するx1は、100000の10乗根となり、その計算法は、その1に示しました。
基数が10のとき、指数が2と3では、102 = 100、103 = 1000の値となります。
指数2.5は、指数2と3の、中間の値となります。
累乗102.5 は、316.2になり、102 = 100と、103 = 1000の、中間の値となります。

一般的に、指数nが2.13579の様に、n=n0.n1n2n3n4n5と、表現すると
an0.n1n2n3n4n5 = an0+0.n1+0.0n2+0.00n3+0.000n4+0.0000n5
= an0*a0.n1*a0.0n2*a0.00n3*a0.000n4*a0.0000n5
x0 = an0, x1 = a0.n1, x2 = a0.0n2, x3 = a0.00n3, x4 = a0.000n4, x5 = a0.0000n5 とすると
an0.n1n2n3n4n5 = x0*x1*x2*x3*x4*x5 となります。
さらに、x110 = an1, x2100 = an2, x31000 = an3, x410000 = an4, x5100000 = an5 です。
x1は an1の10乗根と、x2は an2の100乗根、 x3は an3の1000乗根, 等々です。
a=10,n5=9の場合、x5は 109=1000000000の100000乗根 です。
なお、n4=0の様な場合、x4=1 です。





指数が、2.5の様に、実数の場合、累乗根の計算をどう取り扱うのかを、検討します。

基数100の2.5乗根は、x2.5=100を満足するxを、検索する課題になります。
実数は、2の様な自然数の部分と、.5の様な小数点以下の部分から、構成されます。
ここでは、以下のように、任意のxに対して、x2.5を前述の方法で計算し、100と比較します。
(1)最初に、2.5乗根の自然数の部分を、検索します。
   xは、100の3乗根(4.64)より大きいと、想定できます。
   自然数の部分の検索は、4,5,6,・・・のxに対して、2.5乗を求め、100と比較します。
   62.5=55.9で100未満、 72.5=129.6で100を超えるので、自然数の部分は、6です。
(2)2.5乗根の小数点以下の部分を、検索します。
   小数点第一位の検索を、6.1,6.2,・・・の各々に対して2.5乗を求め、100と比較します。
   6.32.5=99.6で100未満、6.42.5=103.6で100を超えるので、6.3とします。
(3)小数点第二位以下は、(2)と同様な方法を用い、小数点第七位まで、検索します。

任意の基数のn乗根は、上記の(1)〜(3)の手順の、一般化により、検索が可能です。








累乗と累乗根 負の実数

上述では、指数nは、正の実数としました。
指数が負の実数の場合、累乗と累乗根の計算をどう取り扱うのかを、検討します。

累乗の計算
10-2.5 = 10-2.5*102.5/102.5 = 10-2.5+2.5/102.5 = 100/102.5 = 1/102.5
10-2.5 = 10 の計算は、102.5 の計算値の、逆数になります。

一般的に、a-n=1/an と、表現できます。
従って、a-n の計算は、an の計算を行い、その計算値の、逆数を求めます。



累乗根の計算
一般的に、xn=a を満足する、累乗根xの計算方法は、nの符号により、以下の様になります。
(1) x2.0=4.0 の様に、 n >= 0 の場合
(2) x-2.0=4.0 の様に、 n < 0 の場合

(1)の場合の計算方法は、上述の累乗根の計算において、示しました。

(2)の場合、式は、x-2.0=1/x2.0=4.0に、変形できます。
   さらに、1/x2.0=4.0 は、x2.0=1/4.0 に、変形できます。
   従って、x-2.0=4.0 の計算は、x2.0=1/4.0 の累乗根の計算と、同じになります。
   そこで、変数を、n=-n, a=1/a と置き換えると、(1)の計算方法が、利用できます。







累乗のグラフ

y = ax のグラフ

a1 =   a2 =   a3 =  





累乗根のグラフ

y x= a のグラフ

a1 =   a2 =   a3 =  





対数


関係式 y=an において、
与えられたaとnに関して、yを求める計算が、累乗の計算です。
与えられたyとnに関して、aを求める計算が、累乗根の計算です。

対数の計算は、与えられたyとaに関して、nを求める計算です。
累乗の計算では、102 = 100、103 = 1000、102.5 = 316.2 の値となります。
従って、aが10のとき、100の対数は 2 、1000の対数は 3、 316.2の対数は 2.5 です。

316.2 = 102.5 を参考に、対数を求めるプログラミングを、検討します。
関係式は、316.2 = 102.5 = 102+0.5 と変形できます。
従って、316.2 = 10n0.n1n2n3n4n5 を満足する、n0.n1n2n3n4n5の検索となります。
10n0.n1n2n3n4n5の計算方法は、その2の累乗の計算において、検討しました。

一般的に、an = y の値は、n >= 0 ならば y >=1.0、 n < 0 ならば y < 1.0です。
y >=1.0 の場合は、前述の計算方法を、用います。

しかし、 y < 1.0 の場合は、n < 0 となり、前述の方法は、不適切であり、検討が必要です。
例えば、 n < 0 では、10-1 = 0.1 、10-2.5 = 0.0031622 です。
10-2.5 = 10-3+.5 = 10-3*10+.5  = 1/1000*10+.5 = 0.0031622
1/1000*10+.5 = 0.0031622 より、10+.5 = 1000*0.0031622=3.1622 となります。
そこで、 y < 1.0 の場合は、最初に、y*an0 > 1.0 を満足する、 n0の最小値を、検索します。
次に、y = a-n0+.n1n2n3n4n5 を満足する、n1n2n3n4n5 の検索をします。

y =   a =  とする   

与えられたyとaに関して、y=anを充たす、対数nは、次式で、表現されます。
n = log a y
ここで、表記を、n ⇒ y, a ⇒ b, y ⇒ x に、置き換えて、y = log b x の表記法を、用います。
対数では、基数bは、底と、呼ばれています。

エンゲルスの『自然の弁証法』の『数学』において、以下の記述が、見出されます。
「どの数も他のどの数の累乗とも考えられる―対数系は整数と分数と同じ数だけ存在するからである。」
これは、y = an = bm = ・・・ を、意味します。

y = は、 a =  とする   n =
          b =  とする  m =

対数は、水溶液の性質を表現する、pH(ペーハー)の表示に、利用されています。
水溶液では、水素イオンH+と水酸化物イオンOH-が、存在します。
それらの濃度は、電離平衡 [H+]*[OH-] = 1.0*10-14(mol/l)2 の関係式が、成立しています。
pHは、pH = - log [H+] で、定義されます。
純水は、[H+] = [OH-] = 1.0*10-7(mol/l) であり、pH = - log 1.0*10-7 = 7 です。
酸性の水溶液は、H+がOH-より多く、pH は、7以下です。
pH = 3では、[H+] = 1.0*10-3(mol/l) 、[OH-] = 1.0*10-11(mol/l) です。
pH = 2では、[H+] = 1.0*10-2(mol/l) 、[OH-] = 1.0*10-12(mol/l) です。
pHが1小さくなると、 水素イオン濃度 [H+]は、10倍ほど、濃くなります。
アルカリ性の水溶液は、OH-がH+より多く、pH は、7以上です。
pH = 11では、[H+] = 1.0*10-11(mol/l) 、[OH-] = 1.0*10-3(mol/l) です。
pH = 12では、[H+] = 1.0*10-12(mol/l) です、[OH-] = 1.0*10-2(mol/l) です。
pHが1大きくなると、 水酸化物イオン濃度[OH-]は、10倍ほど、濃くなります。



計算尺


化学の計算などで、正の実数 x, y の積や商の計算に、対数を利用した時代が、ありました。
x = am, y = anとすると、x*y = am*an = am+n、m = log x, n = log yとなります。
さらに、log (x*y) = log(am*an) = log( am+n) = m+n = log x + log y
或いは、log (x/y) = log(am/an) = log( am-n) = m - n = log x - log y

上記の関係式から、log (x*y)やlog (x/y)は、log x と log yの和や差に、関係付けられます。
log xやlog yの表示に、対数目盛を用いると、和や差は、目盛の物理的な操作に、対応します。
計算尺では、 x, y と結果を表示する、三本の対数目盛を、利用します。
三本の対数目盛は、log xを示す目盛、log yを示す目盛、演算の結果を示す目盛です。
演算は、log yを記述している尺を、左右に、スライドすることにより、行います。



log (2.0*4.0) = log 2.0 + log 4.0 を例に、積を求める操作を、説明します。
(1)log xの目盛の2.0の位置に、log yの1.0の目盛りの位置を、合わせます。
(2)log yの目盛の4.0の位置に、対応する、演算の結果を表示する目盛を、目測します。



log (2.0/4.0) = log 2.0 - log 4.0 を例に、商を求める操作を、説明します。
(1)log xの目盛の2.0の位置に、log yの4.0の目盛りの位置を、合わせます。
(2)log yの目盛の1.0の位置に、対応する、演算の結果を表示する目盛を、目測します。



上記の例は、x, y は、ともに、1.0より大きく10.0未満の、一の位の正の実数です。
演算の結果は、積が、1.0より大きく100.0未満、商が、0.1より大きく10.0未満の、範囲です。
x, y が一の位以外では、演算の結果が、0.1から100.0未満の範囲を、超える場合が生じます。
この場合には、計算に用いるx, y を、1.0より大きく10.0未満とする、対処が必要です。
例えば、2000*0.04 = 2.0*103*4.0*10-2 = 2.0*4.0*103-2と、処理します。
2.0*4.0の演算の結果に、位取りの処理として、103-2 = 10を、掛け合わせます。

x =   y =      






対数のグラフ

y = log b x

対数の式 y = log b x において、xを真数 、 b を底と、呼びます。
底が b = 10 の場合は、常用対数と呼ばれ、底を省略して、y = log x と、表記します。
底が b = 2.71828 の場合は、自然対数と呼ばれ、y = ln(x)と、表記されます。

底1 =   底2 =  とする





指数関数的増加


変数の増加とともに、関数の値が、増加する現象が、存在します。
それは、一次関数 y = a*x、二次関数 y = a*x2 、指数関数 y = ax などで、表現されます。
a = 2,x = 2とすると、二次関数で y = 2*22 = 8 、指数関数で y = 22= 4 です。
a = 2,x = 10とすると、二次関数で y = 2*102 = 200、指数関数で y = 210 = 1024 です。
両者を比較すると、指数関数の方が、急速に増加することが、理解できます。
この増加は、指数関数的増加と、呼ばれています。

係数(k)を用いると、指数関数の式は、y = ak*x になります。
両辺の常用対数をとると、log a y = log aak*x = k*x*log aa = k*x 、になります。
このことは、log a y は、一次関数 log a y = k*x、で表現できます。
この関係は、以下の操作で、グラフ上で、確認できます。

係数(k) =  底(a) =  とする

log a y ak*x のグラフ




片対数グラフ


データ x,y が、log a y = k*x で、表現できるか否の判断に、片対数グラフの利用があります。
次のデータ x,y を、片対数グラフ上に、プロットします。
x1,y1 / x2,y2 / ・・・ = 1,2.71828/3,20.08549/6,403.427/4.5,90.0168



上記のグラフより、データは、一次関数 k*x の直線で、表現されています。
さらに、直線の傾きは、k = 0.4343と、算出されました。
このことから、データは、指数関数 y = a k*x において、y = 100.4343*x で、表現できます。
或いは、指数関数が y = a x とすると、a = 100.4343 = 2.7183、となります。

下記のデータは、指数関数や二次関数などの、xとyに関する、数値です。
データを複写し、データの項に貼り付け、により、片対数グラフが、表示されます。

(2.71828)x : 1,2.71828/3,20.08549/6,403.427/4.5,90.0168
(2)x : 1,2/2,4/3,8/4,16/5,32/6,64/7,128/8,256/9,512
(3)0.5*x : 2,3/4,9/6,27/8,81/10,243
(x)2 : 2,4/3,9/4,16/5,25/9,81
(x)3 : 2,9/3,27/4,64/5,125/9,729

データ  





指数関数的減少

化学反応 A→B の一次反応では、反応物質の減少する速度は、反応物質の濃度に、比例します。
一次反応は、微分方程式 -d[A]/dt = k*t 、tは時間変数、 kは反応速度定数、で表現できます。
微分方程式の解は、[A] = [A]0 e-k*t、[A]0 は初濃度、e = 2.71828 、で表現できます。
反応物質の濃度が、初濃度[A]0の半分になる時間 t 1/2 は、以下の関係式から、求まります。
[A] = [A]0 e-k*t1/2 = (1/2)*[A]0 より、 e-k*t1/2 = 1/2
自然対数を用いると、 ln( e-k*t1/2) = -k*t1/2*ln(e) = -k*t1/2 = ln(1/2) = -0.693
従って、t1/2 = 0.693/k 
[A] = [A]0 e-k*tを示す現象は、239Pu などの、放射性同位元素で、観測されます。
239Pu の原子核の崩壊では、半減期が、24000年です。

半減期に関して、以下の諸点を、留意します。
(1) 半減期は、反応物質の初濃度[A]0に、依存せず、一定です。
    反応のどの途中段階からも、その半分の濃度になる時間は、いずれも同じです。
(2) 半減期は、化学反応においては、反応速度定数 k に、依存します。
    反応速度定数 k は、化学変化の活性化エネルギーや、反応温度に、依存します。

初濃度[A]0 = 1 とする、指数関数の式 y = e-k*t に対して、両辺の常用対数をとると
log y = -k*t*log e = -0.43429*k*t
従って、log y は、時間 t に関して、傾きが-0.43429*kとなる、一次関数です。
これから、t と y に関するデータが、指数関数の式で、表現できるか否かを、判断できます。
y に関して片対数グラフを用いて、データをプロットして、直線か否かを、判断します。
さらに、直線の勾配から、速度定数 k や半減期 t1/2 が、算出できます。

下図は、データ 0,1/0.5,0.4724/1,0.2231/1.5,0.1053/2,0.0498・・・を、用いた例です。
o 印は、log y の値を、片対数グラフ上に、プロットしました。
o 印を結ぶ線は、直線的であり、隣接間の平均の勾配は、-0.6509と、算出されます。
平均の勾配値より、k = 1.4987、t1/2 = 0.4624 と、算出されます。
この値から、赤線で、e-k*t の指数関数を、描画しました。
o 印は、データの値であり、指数関数上にあることが、明らかです。




反応速度定数 k が、0.00001 < k < 10000 の範囲において、上記のグラフを、描画できます。
この k の範囲は、70000 > 半減期 > 0.00007 に、対応します。
また、与えられた、t と y の入力データより、上記のグラフを、描画できます。
データの様式は、t1,y1 / t2,y2 / ・・・ に関して、 0,1/1,0.3679/2,0.13539・・・
以下の数値は、入力データの、一例です。
( k = 1) 0,1/1,0.3679/2,0.13539/3,0.0498/4,0.01832/5,0.006738
( k = 10000) 0,1/0.0001,0.3679/0.0002,0.13539/0.0004,0.01832/0.0006,0.00249
( k = 0.0001) 0,1/10000,0.3679/20000,0.13539/40000,0.01832/60000,0.002479
( k = 0.5) 1,30.327/3,11.157/2,18.394/0,50.000/4,6.767/5,4.104/6,2.489
( 不適合) 0,1/1,0.3879/2,0.22539/3,0.0298/4,0.01032/5,0.006738


k =  とする   
データ  の   
半減期は

   e-kxlog y