はじめに
弁証法は、「自然、人間社会および思考の一般的な運動=発展法則にかんする科学」です。 研究過程は、人間が、自然や人間社会を対象とした、思考の運動・認識過程です。
従って、認識過程においても、何らかの発展法則が、弁証法により、見出されると、期待できます。
研究過程を、首尾よく進めるためには、どうしたらよいか?
「自由とは、必然性の認識である」は、研究過程の発展法則を、見出し、適用することを、示唆しています。
動機づけ(モティベーション)
研究の出発点は、研究の動機づけ(モティベーション)であり、それは、研究過程の推進力に、なります。
研究の動機づけは、研究者本人の内的な要因と、社会からの外的な要因が、あります。
内的な要因には、少年期の夢・興味・疑問などの、知的な要求に、起因するものが、あります。
内的な要因は、発想が自由であり、個性的な研究が発達する、可能性を、含んでいます。
しかし、これらの要因は、漠然としていて、課題の達成には、数十年以上の歳月が、必要な場合もあります。
あるいは、人類の科学技術の到達点からみて、課題の達成が、当面は、困難であることもあります。
内的な要因は、外部からの強制力として、研究者に作用せず、いつでも、研究の動機づけが、解消できます。
従って、夢の達成には、一生涯にわたる、執着心が、必要です。
外的な要因には、大学での卒業論文・企業などでの研究業務・他者からの依頼などが、あります。
大学での卒業論文は、研究期間が限られていて、それに応じて、研究課題が、設定されます。
外的な要因は、研究者に対して、外部からの強制力として、作用します。
問題は、外的な要因が、研究者の内的な動機づけに、転化するか否か、です。
そのためには、研究テーマの意義や位置付け、面白さなど、当事者の理解と納得が、必要です。
これが欠如すると、研究が単なるルーティンワークとなり、研究者としての成長が、困難になります。
問題意識や課題設定
次の研究過程は、漠然とした動機づけの段階から、より明確な問題意識の形成や、課題設定の、段階です。
研究の最初の段階は、動機づけに関連した課題に関し、人類の認識段階を把握するための、情報の収集です。
情報は、研究論文や文献の調査、資料の収集、図書館などの利用、会話などを通して、収集できます。
近年は、インターネットを利用した、情報検索機能が発展し、的確で広範囲の情報収集が、可能です。
情報の収集は、問題意識や課題意識のもとで、情報の取捨選択が、行なわれます。
この過程を通して、問題意識が鮮明になり、それを解決するための、研究課題が、明らかになります。
研究の目的・方法・手段
問題や課題が明確になると、問題の解決や課題の達成のため、その方法や手段が、必要です。
方法や手段は、人類の過去の蓄積の中から、見出すことが、できます。
それがない場合は、方法や手段の、発見・発明・開発などが必要となり、アイディアが生成されます。
方法や手段は、それを用いる上での、技術の選択や、知識や技能の習得が、必要になります。
また、機器・器材・道具・材料の選択と、購入や利用が、必要になります。
複雑な課題や、研究手段が未発達な場合など、長期的・段階的な課題の解決を、必要とすることがあります。
長期的・段階的な解決が必要な課題は、研究過程が分割され、それに対応する研究の目的を、設定します。
実践の過程
方法と手段を用い、問題の解決や、課題達成のため、調査・観測・観察・実験・計算など、実践を行います。
この過程は、問題が解決したり、課題が達成できた段階で、終わります。
研究の総括
問題が解決し、課題が達成されると、研究の総括の過程になります。
ここでは、設定した問題や課題と、調査・観測・観察・実験・計算などの結果との対応を、検討します。
さらに、研究の目的に、的確に対応する、結論が、必要です。
また、新たな問題点や、研究の不十分さなど、今後の研究課題を、見出すこともあります。
研究成果の発表
研究過程の最終段階は、学会での研究発表や、学術雑誌への論文の投稿など、研究成果の発表です。
研究成果の発表は、研究で得られた認識を、研究者個人に留めず、人類の認識活動に、還元する過程です。
そのためには、論文においては、研究の再現性・追尾可能性の保障が、必要です。
研究過程の発展
以上の、研究過程の実践は、新たな研究の発展の可能性を、秘めています。
@ 問題意識や課題設定における、情報収集は、新たな研究課題を見出す、きっかけになります。
A 研究方法や手段の獲得は、適用した研究課題に限らず、他の研究課題に利用できる、可能性があります。
B 総括の過程では、該当課題に関して、新たな問題や、次の研究の発展方向が、見えてきます。
C 研究成果の発表や会話を通して、研究者間の交流が生じ、共同研究の可能性が、生まれます。
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