はじめに
唯物論と観念論では、「なにが根源的なものか、精神かそれとも自然か」に対して、見解が異なります。
形而上学と弁証法では、自然・人間の歴史や精神活動を、どう認識するかに関して、見解が異なります。
エンゲルスは、『反デューリング論』などで、形而上学と弁証法に関して、検討を行っています。
弁証法的な認識を行うには、それらが何であるかを、知ることが、必要です。
ここでは、エンゲルスの議論を、要約します。
形而上学
エンゲルスは、形而上学的な考え方は、
「対象の性質におうじて広狭の差のある、かなり広い領域で正当でもあれば必要でさえある」
しかし、
「つねにおそかれはやかれ限界につきあたるのであって、この限界からさきでは一面的な、偏狭な、抽象的なものとなり、解決できない矛盾に迷いこんでしまう。」
それは、
「個々の物にとらわれてそれらの連関を忘れ、それらの存在にとらわれてそれらの生成と消滅を忘れ、それらの静止にとらわれてそれらの運動を忘れるからであり」
と、指摘しています。
形而上学的な考え方の例として、
「日常の場合には、たとえばある動物が生きているかいないかを、われわれは知っており、はっきり言うことができる。」
しかし、それには限界があり
「死の瞬間を確定することも不可能である。」
「死は、一度にかたづく瞬間的な出来事ではなくて、非常に長びく過程だからである。」
弁証法
エンゲルスは、弁証法に関して、
「事物とその概念による模写とを、本質的に、それらの連関、連鎖、運動、生成と消滅においてとらえ」
「自然、人間社会および思考の一般的な運動=発展法則にかんする科学という以上のものではない」
さらに、「自然および人間社会の歴史から」、以下の、三つの弁証法の法則を、抽出しています。
@ 量から質への転化、またその逆の転化の法則
A 対立物の相互浸透の法則、両極的対立物の相互浸透と、
極端にまでおしすすめられたときのそれら対立物の相互の転化
B 矛盾による発展または否定の否定
近代の自然科学が、弁証法の検証のため、豊富な材料を供給するとし、次の例が、検討されています。
@ 量と質
水の温度・熱量と融点・沸点 原子と分子 メンデレーエフの予想 結節点としての物理学上の定数
CnH2n+2 (正パラフイン列) CnH2n+2O (第一アルコール列) CnH2nO2 (一塩基脂肪酸列) NO (一酸化窒素) N2O (二酸化窒素) N2O5 (五酸化二窒素)
A 対立物
両極性 正負の電気 陽極と陰極 直線と曲線 正と負 東を西 南極と北極 脊椎動物と無脊椎動物
回転運動での牽引と接線力 ニュートンの引力と遠心力 生命体での同化と分解
B 否定の否定
大麦粒 昆虫、地質学 微分積分学
矛盾
運動と平衡 恒常性と変化
人間社会の歴史では、
@ 量から質
フランスの騎兵隊とマムルーク人との戦闘 一定の最小限量の交換価値額と資本への移行
A 対立物
共同所有と私的所有 搾取する者と搾取される者
階級対立:奴隷所有者と奴隷 領主と賦役農民 資本家と賃金労働者 封建貴族と市民階級
B 否定の否定
『個人的所有』の揚棄と再興、資本義的生産の否定
より高い発展段階における共同所有の復活としての私的所有の廃止
矛盾
社会的生産と資本主義的取得 奴隷制の生産様式 都市と農村 近代工業の矛盾
階級の存在と正義や平等
思考方法においては、
偶然性と必然性 同一性と区別 仮象と本質 肯定と否定 原因と結果
幸一の世界と弁証法
エンゲルスは、「自然、人間社会および思考の一般的発展法則」として、弁証法の検討を、行っています。
問題は、エンゲルスの弁証法の正否の議論でなく、弁証法の発展法則を、如何に、幸一に取り込むかです。
マルクスとエンゲルスは、唯物論と弁証法を、一生涯の研究の土台として、仕事をしたと、思われます。
唯物論と弁証法を学び、それを身に着けることは、幸一の発展にとって、重要な、課題です。
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