画像情報を用意する

スキャナーやデジタルカメラを利用し、印刷物などを複写し、画像情報として、PDFファイルやJPGファイルとして記録します。



スキャナーを利用して書籍を複写する

 
スキャナーの利用は、書籍の背表紙を裁断できるかどうかで、得られる画像の質と処理時間が異なります。    
 背表紙 画像 処理時間
 裁断できる場合 歪みが少ない ADF(自動給紙装置)の利用で、A4サイズ・300DPI・500頁で10分程度
 裁断でない場合 綴じ目部分が歪む ADFが利用できず、長時間


 
複写モードに関して
複写モードとして、カラー・グレー・モノクロの三種類があります。    
 モード 対象
 カラー カラー写真を含む
 グレー 256階調の白黒写真を含む
 モノクロ 文字情報のみの取得

どのモードで複写をするかは、以下の考慮が必要です。
@ 文字は、ディスプレーへの表示に関して、モノクロモードが鮮明であり、読みやすい。
A 白黒写真の書籍は、256階調あるグレーモードでの複写が妥当です。
  モノクロモードは、0か1かの二階調になり、中間の情報が失われます。
B カラー写真がある場合、グレーモードやモノクロモードで複写すると、色の情報が失われます。
C OCRソフトの利用に関して、モノクロモードが適しています。

以上を総合して考慮すると
D OCRの利用上で、モノクロモードでの複写は欠かせません。
E カラー写真や白黒写真を含まない場合は、モノクロモードのみの複写を行います。
F 白黒写真を含み、カラー写真を含まない場合は、モノクロモードとグレーモードの複写を行います。
G カラー写真を含み、白黒写真を含まない場合は、モノクロモード・カラーモードの複写を行います。
H カラー写真や白黒写真を含む場合は、モノクロモード・グレーモード・カラーモードの複写を行います。
I 二種類以上のモードが存在する場合、を利用して、編集を行ないます。
J スキャナーの処理ソフトの機能として、同時に二つのモードでの記録が可能なソフトがあります。

読み取りのサイズに関して
スキャナーの処理ソフトは、はがきからA3サイズまで、各種の定型の読み取り画像の選択が可能です。しかし、背表紙を裁断した用紙を定型サイズで読取ると、裁断した部分が黒い線として取り込まれる場合があります。これを避けるためには、ユーザー定義サイズを利用します。
例えば、A4サイズの210×297mmは、裁断部分が5mmとすると、205×297mmのユーザー定義サイズを用います。

読み取りの解像度に関して
読み取りの解像度は、通常300DPIを選択します。新聞の縮刷版などの文字の大きさが極めて小さい場合は、400DPI以上を選択します。どの解像度を選択するかは、複写の結果を見て検討します。

記録の形式に関して
PDF形式かJPG形式かを選択します。PDF形式を選択すると、複数ページが一つのファイルに保存されます。JPG形式を選択すると、ページ毎に一つのファイルに保存されます。



PDFファイル

汎用性のある記録形式として、PDF(Portable Document Format)があります。PDFファイルは、計算機のOSや機種によらず、利用が可能です。PDFファイルの表示は、公開されている無料のソフトが使用できます。記録形式が公開されていて、記録内容の読み取りが、専用ソフトに限らず可能です。
現在は、ワープロ・表計算・プレゼンテーション・画像処理・HTMLなどの多様なソフトを用いて、情報が生成されています。生成した情報の印刷機能、ファイル(F) ⇒ 印刷(P) ⇒  プリンター(P) の選択肢しとして、PDFプリンターがあり、印刷ドキュメントの出力されます。生成したPDFファイルには、使用したソフトのテキスト・画像・図形情報がデータとして含まれます。PDFファイルは、使用するソフトに依存しない、共通のドキュメントです。これにより、PDFファイルが情報の公開・頒布に、広く利用されています。

PDFファイルは、複数のページを一つのファイルに統合した統合型(結合型)と、1ページを1ファイルとする分割型があります。
統合型は、ページの参照が容易で、データとして配布する場合など、便利な形式です。
しかし、大量のページを1ファイルとすると、記憶容量が大きくなり、ホームページからのアクセスでは不必要なトラフィックが発生します。
一方、分割型の容量は小さくなりますが、多量のファイルが生成されます。ホームページからのアクセスでは、必要なページだけのダウンロードで済みます。各ページの参照は、各ファイル毎の選択となり、ファイルを開く手数が増えます。「電子書庫・書籍・ノート」では、分割型PDFファイルを利用しています。各ページの参照は、ページ捲り機能を設けているので、迅速にできます。

利用する目的に応じて、分割型PDFファイルから統合型PDFファイルへ、統合型PDFファイルから分割型PDFファイルへの、変換が必要になります。これには、PDFファイルの編集機能をもつソフトを利用します。



統合型PDFファイルから分割型PDFファイルを作成する

スキャナーを利用した複写では、統合型PDFファイルが作成されます。「電子書庫・書籍・ノート」では、分割型PDFファイルを用いています。従って、統合型PDFファイルから分割型PDFファイルへの変換が必要になります。
「Acrobat Standard」 を用いた手順は、以下のとおりです。  
       
統合型のファイルを開く文書 ⇒ ページの抽出を選択終了ページを入力し をクリック
保存先フォルダーの決定新しいフォルダーの名前を入力し
をクリック
分割されたファイルの確認


分割型PDFファイルから統合型PDFファイルを作成する
 
             
ファイル(F) ⇒ 複数ファイル(M)を選択をクリックする結合するファイルを選択し、
をクリック
をクリックをクリックファイル結合完了の後をクリック
名前をつけて保存 をクリック統合型ファイルの確認




   
デジタルカメラを利用して画像情報を用意する

デジタルカメラ

印刷物の複写に、スキャナーの利用以外にも、デジタルカメラの利用も可能です。スキャナーは、紙が複写の対象であり、最大でA3サイズ(420×297mm)です。デジタルカメラの対象物は、紙に限らず、大きさの制限はありません。また、スキャナーの利用場所は、それを設置されている場所に限定されます。デジタルカメラの使用場所は、撮影者がいる場所なら、何処でも使用できます。
1970年代に、史料の保存を図る方法として、マイクロフィルムが使用されました。マイクロフィルムへの記録は、銀塩の化学反応を利用した銀塩カメラを用い、グレーモードでの複写です。CCD(Charge-Coupled Device・電荷結合素子)を利用したデジタルカメラが発展すると、銀塩カメラの利用は減少してきました。
デジタルカメラは、銀塩カメラに比べると、記録媒体の価格が極めて安価になっています。また、情報処理技術の取り込みで、機材の使用方法が簡単になり、誰でもが利用できます。撮影データの保存と活用は、パソコンやプリンターなどが利用されます。
銀塩カメラの利用は、フィルムの現像などに時間を要し、撮影結果の確認に、数日を必要としました。デジタルカメラは、撮影したら直ちに、撮影結果を確認することが可能であり、撮影のやり直しが容易です。
史料のマイクロフィルムへの記録は、カラーモードでの記録されていず、朱書きなどの判別が容易ではありません。デジタルカメラを用いた、カラーモードでの複写が望まれます。
デジタルカメラは、いわゆるカメラに限らず、スマートフォンやノート型パソコンに組み込まれています。撮影データは、インターネットを利用して、送信することが可能です。

デジタルカメラの性能を表す指標として、画素数があります。画素数は、横と縦のピクセル数で表現されます。どの画素数のデジタルカメラを選択するかは、それを表示する媒体との関係を考慮する必要があります。
例えば、A0サイズ (841×1189mm) の紙に300DPIの密度で印刷すると、14013 x 9933 (139M)ピクセルの画素数になります。従って、最大で139Mサイズ以上の性能がないカメラだと、画質の低下をもたらします。
FHDのディスプレイは、1920 x 1080 (2M) ピクセルの画素数となります。従って、1920 x 1280 (2.5M) ピクセルのカメラで対応が可能です。

以下の表は、デジタルカメラの性能とディスプレイの画素数を示します。

デジタルカメラの画素数              
横(px) × 縦(px)総ピクセル数(px)画像サイズ
1920 × 1280250万2.5M
4608 × 34561600万16M
6000 × 40002400万24M
6720 × 44803000万30M
7952 × 53044200万42M
8256 × 61925100万51M
ディスプレイの画素数              
通称横(px) × 縦(px)総ピクセル数(px)
FWXGA1366 × 768105万
SXGA 1280 × 1024131万
FHD1920 × 1080207万
WUXGA1920 × 1200230万
WQHD2560 × 1440369万
QFHD3840 × 2160829万

市販されているデジタルカメラの性能は、最大画素数で表示されています。でも、撮影時には、より低い画素数の選択が可能です。ディスプレイの解像度や画像処理での損失を考慮して、撮影時の画素数を選択する必要があります。
デジタルカメラで撮影した画像は、5000万画素を越える機種も販売されています。しかしこれを表示するパソコンのディスプレイの解像度は、SXGA(1280×1024ピクセル)で131万画素、FHD(1920×1080ピクセル)で207万画素です。5000万画素の画像をFHDのディスプレイに表示するには、5000万画素から207万画素へ、画像の圧縮がなされています。207万画素以上の情報は、無駄に記録された情報ということになります。
デジタルカメラの選択には、パソコンのディスプレイとの関連を考慮するのが望まれます。ディスプレイのみに画像を表示するのであれば、QFHDのディスプレイを利用 した場合でも、画素数は3840×2160ピクセル(8M)です。従って、最大の画像サイズが16Mのデジタルカメラでの対応で可能です。


JPGファイル

デジタルカメラで利用されている記録形式が、JPG形式(Joint Photographic Experts Group)です。JPG形式のファイルは、規格化されていて、汎用性のある画像の記録形式です。
JPGファイルの画像は、切り取りや画像の回転などの処理が、画像処理ソフトにより可能です。撮影した画像から、必要な部分だけを切り抜くことが必要な場合があります。この解説書に利用している画像は、切り取りの処理を行なっています。また、画像サイズの変更も可能です。
JPGファイルには、画像以外にも、撮影日時や撮影機器のメーカー名などのテキスト情報が記録されます。また、GPS機能を有したデジタルカメラでは、撮影場所の緯度・経度が、GPS情報として記録されます。従って、これらの情報を活用することが可能になります。
画像処理ソフトを用いてJPGファイルの保存を行なうと、画像の圧縮操作が行なわれ、ファイルの容量が減少します。JPGファイルの圧縮は、非可逆圧縮になります。非可逆圧縮は、圧縮されたファイルから元のファイルそのものには復元ができず、画像の劣化が生じます。従って、画像処理ソフトを使用する以前に、JPGファイルを複写して原本を残す注意が必要です。

JPGファイルからPDFファイルを作成する

デジタルカメラを利用した複写では、一般的にJPGファイルとして画像情報が記録されます。
ディスプレイで画像を参照するのに、画像の拡大機能の利用の点で、JPGファイルよりPDFファイルの方が便利です。
従って、JPGファイルからPDFファイルへの変換が必要になります。
JPGファイルからPDFファイルへの変換は、画像処理ソフトの利用によって可能です。
この変換は、1ファイルごとの処理になります。
しかし、「Acrobat Standard」 などのPDF編集ソフトを利用すると、多数のJPGファイルを一括して処理できます。
 
   
結合するファイルとしてJPGファイルを選択
結合PDFファイルの種類を選択ファイル結合終了
 


撮影時の留意点

デジタルカメラを使用する文書の複写では、得られる画像を考慮して、以下の諸点に留意することが大事です。
@ 文書などの撮影では、コピースタンドを用いて、カメラを固定する。
A カメラの向きと文書の向きに注意しないと、撮影後に180度の画像の回転処理が必要となる。
B カメラが水平にセットされ、カメラの傾きがないかを注意する。
C 文書を複写台に平行に置く
D 背表紙の処置 二枚の板を用意して、図の様に背表紙を落とし込み、膨らみをおさえる。  
   
カメラの傾き
文書を平行に背表紙の処置

野外における撮影
@ 案内板など カメラを案内板と平行にして、案内版の中央位置で撮影する。
A コントラスト 晴天の時、影の部分と陽が当っている部分とのコントラストの差が大きく、必要な部分の情報が判別できないことがある。曇天の日を選ぶなどをする。
     
カメラの向き